海を渡ってきた貴女に

溜息が欄干を越えて 遥か下を走るタンカーのマストを直撃する 橋脚は海流に蔑まれ 空にも届かずただ孤立する 貴女は幾重もの鎧をまとい 遠く海を渡ってきた 大きな雨粒が命を育む 南を纏った風が吹く

鎧の中に閉じ込めた魂は 出口を知らない囚人だ 日が登ることもなく 日が沈むこともない 青春の残査を飲み干して 波間に涙を落としても 海猫一羽 振り向いてはくれない

今日 脱ぎ捨てた貴女の鎧は 混沌の宴 内なる鎧 今立ちあがれ 今踏み出そう 脱皮した状況が導くのは 路傍に遺棄された熱情ではなく 求めても求めても零れ落ちた蒼い営み