恵み

 「あなたがたを襲った試練で、人間として耐えられないものはなかったはずです。・・・試練とともに、それに耐えられるよう、逃れる道をも備えてくださいます」使途パウロの言葉だそうだ。  耐えられないほどの苦しみはあっても、今こうして生活しているから耐えれたのだろう。今生きている人すべてに言えることだ。どんな逃れる道が用意されていたのか分からないが、今こうして生きているから、その用意された道を通ったのだろう。僕にとって、生きるってことは希望に溢れ輝く太陽のように熱量に満ち満ちたものではない。死は、恐怖の門の向こうにあるから、今くぐる勇気はない。神様に毎晩祈った。小さな願いはすべてかなえられた。大きな願いはすべて却下された。お蔭で欲深い人間にならずにすんだ。実は、これこそが僕にとって最大の恵だったのかもしれない。