ブラジル

 最近、ブラジルでコーヒーブームだそうだ。えっ!と耳を疑いたくなる。なんでも、ブラジルでは、高級なコーヒー豆は輸出して、自国では安い低級なコーヒーもどきのものを飲んでいたそうだ。生活水準が上がってきて、やっと、先進国の人達が飲んでいるのと同じレベルのものが飲めるようになったのだ。高級品と言う紹介があったが、僕らが学生の頃から飲んでいたものと変わりない。  思えば同じようなことは世界中で起こっている。石油が産出する国での石油不足。金銀の鉱物が産出される国の貧しさ。米の輸出国の米不足。貴重な動物資源を輸出している国の人達が、それを飼うような生活水準ではない。僕の知識がないだけで上げれば切りがないだろう。国内でも同じような偏りは多くある。汗水流して肉体を提供して働いている人達の賃金の低さ。漁師が市場に魚をおろすときの金額の低さ、百姓が農協に作物をおろす時の金額の低さ。それが幾段階もの収奪を経て、とんでもない値段になる。流通を取りしきっている人の利益に比べれば、生産者の取り分は余りにも少ない。  空調の効いた部屋にいて、キーボードをたたくだけで、多くの富みを得る人達が世に、より多く貢献しているのか。僕にはそうは思えない。職業に貴賎はないと教えられたのは、もう昔のことか。職業に貴賎を作ることを懸命に推し進めている人達が見え隠れする。何を企て、何を狙っているのか。果てしない絶望に襲われた人を沢山作り、何かを一気に変えようとしているのではないかと想像したくなるくらいの悪意が感じられる。貧しい人達がより貧しくならないように、弱い立場の人がより弱くならないように、共同で助け合うことが自分たちを守ることになる。絶望の淵から落ちて判断力を無くする人達を作らないことだ。