高速道路

 今頃、貴女は家に着いたのでしょうか。まだ高速道路の上でしょうか。僕はよく勉強会で貴女の住む街に行きます。僕が貴女の街に行くには、車で20分かけ最寄の駅にいき、そこからローカル線で30分かけて岡山駅に行き、更に新幹線で1時間かかります。その距離を貴女は一人で車を走らせてきました。僕には出来ないことなので感心します。田舎の人間が車で都会に行くのは難しいですが、都会の人が田舎に来るのは簡単なのでしょうか。  田舎の薬局を尋ねて下さってありがとう。僕は貴女の背負っているものを降ろしてあげたい。あれだけ一緒にいて、いっぱい話をしたのだから、これから貴女の様子は手にとるようにわかります。はるばる来て下さったことが決して無駄にならないように僕が頑張ります。僕は貴女にさとしてあげるような成功体験はありません。貴女の傍に椅子を持っていって一緒に腰掛けたように、貴女の苦しみにより添うことは出来ます。貴女が、僕を見てどのような印象を持たれたか分かりません。僕は決して全人的に善ではありませんが、薬剤師である場面だけは善良であろうと心がけています。貴女がいる間に何組かの人が薬をとりにきましたね。どうです、あの善良そうな人達。僕はあの人達に育てられたのです。僕の薬局は買い物をするところではありません。小さな荷物、大きな荷物抱えた人達が、少しだけ背負っているものを降ろして軽くなって帰っていくところなのです。  近い将来貴女が、僕が貴女の街に行くと同じ手段で来てくださることを願っています。貴女が避けていたことのすべてを克服出来ることを信じています。貴女の身体全体から溢れる優しさに僕は感動しました。いつか貴女が多くの人たちに寄り添い、勇気と希望を分けてあげられるようになることを祈っています。