勘違い

 何を勘違いしていたのか、今朝薬剤師会の勉強会の会場を間違えてしまった。会場に着いてもひどく静かで、なんとなく違和感を持ったのだが、施設の受付の人が違う会場を教えてくれた。そこから数百メートルのところに行ってみると、なるほど大きな大会が催されているみたいだったが、医療関係でも介護の講演だった。又数百メートル移動して違う会場へ行ったがそこはひっそりとしていた。静かな一群と出会ったが、短歌の会らしかった。もうそこで気分は萎えてしまった。もうとっくに始まっているし、どうせ薬学生の指導に関する講演だから、田舎の薬局に実習に来るような学生も少ないだろうしなどと、自分を慰めてあきらめた。諦める言い訳なんかいくらでも見つかる。努力する理由はいっこうに見つからないのに。これは昔からの僕の習性だ。試験になれば平生読みもしない本を読みたくなったり、ボランティアをしたくなったり、嫌なイベントから逃げる為なら何でもする。元もとのイベントを頑張る努力をすればいいのに、イベントを避ける努力を惜しまない。  最近はさすがに少しだけ大人になったのか、いやなものから順番に始めるようにしている。いやなものを避けないようにしている。2つの事柄があり、それに優先順位をつけなければならないとしたら、迷わず嫌なことから始めることにした。そして選択の時でも嫌な方を選ぶことにした。そうしたら不思議と全てがうまく行くのだ。気付くのが遅すぎた感はあるが。  講演会に行けなかったお蔭で、ある大切な人の見舞いに今日もゆっくりと行けた。3回目の抗がん剤を今日まで入れたらしいが、吐き気も今回は少なく元気そうだった。体重も増えている。 大きな声でいっぱいお喋りをして帰った。勘違いがもたらせてくれた穏やかな午後だった。