駆逐

 今日、和太鼓のコンサートを聴くために琴電で学園前と言う駅で降りた。駅のすぐ近くにスーパーみたいな建物があり、時間つぶしのためにベトナム人たちと一緒に入った。
 ちょっと廃れ始めた感はあった。人気がないことでそれはすぐに感じた。一瞬やっていないのかと思ったくらいだ。ただ広さは十分あって、入ってみると食料品はもとより100円ショップや電気製品や服などもかなりのスペースを割いていた。かつては多くの客が押し寄せていたのだろうが、残念ながら時間の問題のようにも見えた。そこで興味深い経験をした。
 僕は服を自分で買ったりしないから、値段などは全然分からない。ところがさすがの僕でも「安い」を連発した。と言うのはテナントでITOGOHUKUが入っていたのだ。そこで値段を見て驚いた。多くの服やズボンが999円とか399円とか699円とか、とにかく目を疑うような値段のものが目をひくのだ。それも定価は5800円のものなどと結構な値段がついていた。それなのにこの値引きは何なのだろう。捨てるくらい粗雑か売れ残りなのだろうか。僕はそのどれもがごくごく普通の商品のように見えたのだが。ベトナム人達もさすがに安い安いを連発して、いくつか実際に買った。ある女性は服とズボンを買ったが1300円くらいだったと思う。太鼓を聴きに来ているのだが、まさに衝動的な買い物だった。ただ衝動的でも1300円くらいならだまされても堪えないだろう。
 余りにも安くて一体これで商売が成り立つのかと思ったので、一体どこで作られているのだろうかと知りたくなった。値札を見てみるとバングラディッシュだった。かの国では、一つのズボンを縫うのにいくら報酬をもらえるのだろう。399円の商品のどのくらいの取り分があるのだろう。原料費、運送費、企画代・・・・よくはわからないが恐らく中間マージンだって馬鹿にならない。一番多くをとるのは企業だろうし。
 いかにバングラディッシュ人の工賃がやすいかよくわかる。現地の報酬にあわすとそれなりの報酬を与えているのだろうか。最初僕は「ベトナム製じゃろう」と言っていたのだが、時代は着実に動いていて僕の発想は通用しなかった。
 溢れかえっているベトナム人もいずれ次にやってくる人たちによって駆逐されるのだろう。