一人

 何年か前に、漢方薬を服用していただいている女性に大道芸の面白さを教えてもらって、チャンスがあれば足を運ぶようにしている。ただ僕の住んでいるところの環境から言えば、福山のバラ祭りと今日行った高松の大道芸大会くらいしか大きな大会はない。時々散発的に小規模なものも行われるが、それを見つけるのは難しく知らないことのほうが圧倒的だ。
 何年か通っていると見たことがある芸人が増えてきた。毎回内容を変えるというわけにも行かないみたいで、ほとんどが再放送だ。初めて見る芸は新鮮だが、先が読めるものは感動も半減だ。実力ある芸人を集めるのは難しいのか、よくお会いする人が出来てきた。
 同じことを繰り返したくなかったので、通訳を介して大道芸を見てみたい人、大道芸が好きな人だけ手を挙げてと言っていたのに、高松港に着いて玉藻公園に入ったときに開口一番「オトウサン 花 ナイ」だった。通訳がいなかったので僕も突き放すように「松 綺麗」と言ったが、かの国の人間は綺麗に揃えられた松には関心がないらしい。「ベトナム アル」と、かの国にも松があることを訴えるが、剪定されていない松だとは、彼女達の様子を見ていて分かる。ただ、あるだけなのだろう。
 花へのこだわりは強く、大道芸を見るために移動するたびに「花 ナイ」と繰り返し、いかにもしんどそうに歩く姿を見て今日もまた、あるフレーズが頭に浮かんだ。何年連続で浮かんでくる言葉だろう。「一人で来れば良かった」