違和感

 これはさすがに拒否するだろうと思った。それでも効果を本人が実感していたら続けるモチベーションは保たれるだろうが、全く10ヶ月飲んで実感できなければ他の選択肢を探すだろう。まして、倒れた時と吐いた時以外は病院に行かない人達だから尚更だ。  今度帰国する女性の蓄膿症を治してから、その話が一気に広がって、かの国の人脈で多くの人に色々な病気について相談された。僕で十分対処できるものもあるが、症状を追跡できない場合が多くて全部が全部お世話できるものではない。普段、2週間分漢方薬を飲んでもらって、その後の変化に合わせて薬を作り直すが、そのような臨機応変のお世話は出来ない。恐らく2度と薬を送ることは出来ないだろうから、お世話していいのかどうか見極めがかなり難しい。奇跡みたいな結果を期待されても、治るものしか治すことはできない。  岡山駅前の噴水で待ち合わせて、その場で色々な問診をした。勿論通訳には来ていてもらった。工場の近くの医院で薬をもらっているみたいだが、アレルギー性鼻炎の薬だった。飲み薬が4種類、目薬が2種類だ。たかが鼻の病気に多いなあという印象だったが、それを袋から出して見せてくれたかの国の女性も同じ印象だったのだろう、納得しづらい表情で渡してくれた。通訳をはさんで、身振り手振りも利用して得た情報だと、本人が一番辛いのは「後鼻漏」だ。のどに鼻汁(痰)が降りる、鼻が詰まる、咳払いばかりするなどは、後鼻漏の特徴的な症状だ。実際かの国にいたときは、かの国の病院で蓄膿症と診断されていたらしい。どちらの国の医者が正しいのか分からないが、言えることは全く改善していないこと。だから僕に接触してきた。  牛窓の寮の女性達も時々病院に行くが、とにかく日本の病院は薬を沢山くれると驚いている。後進国から来ているのに薬が多いことを喜ばない。むしろ疑っている。「オトウサン コレノンデ ダイジョウブデスカ」とよく聞かれる。彼女達の感じる違和感こそが身を守る嗅覚なのだろうか。