揶揄

 世の中には才能のある人が多く、こんな危険なときにでも笑わせてくれる人がいる。アホノミクスのとってつけたような「国難突破解散」を「ボク難」と揶揄している。それが真実を鋭く突いているから余計面白い。旨く表現するものだ。  インターネットが普及して、誰もが脚本家になれるし、評論家にもなれる、歌手にもなれるし芸人にもなれる。イラストレーターにもなれるし、企業家にもなれる。1億の人が発信し、1億の人が受け取る。とんでもない自由が手に入ったが、不思議なことに雪崩を打って自由のない世界に突き進んでいる。

毎日新聞2017年9月27日  その言葉に驚いた人も多かっただろう。安倍が25日の記者会見で口にした「国難突破解散」。大義なし、自己都合という世間の衆院解散への批判に、少子高齢化北朝鮮の二つの問題を挙げ反論したかに見える。いずれも深刻な問題だが、それが本当の解散理由なのか。実際、この表現に違和感を抱く有権者は少なくなかったようだ。安倍の会見直後、ツイッター上に「おまえが国難」という言葉があふれ、拡散数の多いキーワードを集めた「トレンド」に入った。  この言葉に続けて生活実感や疑問をつづる投稿が相次いだ。  <保険料の負担増えてるし、実質賃金下がってるし、食料品高くなったし、ぜんっぜんアベノミクスの果実なんて届きません>  <5年も総理やってていまだ国難って、そりゃお前がポンコツだったってこと>  近現代史研究家の辻田真佐憲さんは「国難突破」の4文字に、国威発揚を狙う戦前の国民歌をまず想起したという。  旧防衛庁官房長や内閣官房副長官補を務めた柳沢協二さんは「北朝鮮への不安をあおり支持を高めたいのだろうが、戦争の具体的な前兆もなく日本を狙ってミサイルが発射される状況でもない」と指摘。圧力強化を目指す安倍を「米朝の緊張緩和に向けて働きかけをすべきだ」と批判する。  少子高齢化問題も同じ。「ずっと前から『国難』ですよ。それを今さら解散の言い訳にしようというのはまるで茶番です」と言うのは教育社会学者の本田由紀・東京大教授だ。「女性活躍や1億総活躍などスローガンだらけで、内実は『人手不足なので女も年寄りも働け』。『国難』は安倍政権5年間の的外れな政策の結果です」  落語家で作家の立川談四楼さんも「国難」に「大げさで違和感を持った」と話す。「戦争が今まさに始まるかのような表現だ。記者会見で『北朝鮮が意図的に緊張をあおっている』と言ったが、意図的に国民の危機感をあおっているのは安倍自身でしょう」。そして森友、加計学園問題をそば料理に引っかけ、こう落とした。 「やっぱり(首相)『おろし』につながる『もり・かけ』隠し。つまりは『ボク難突破解散』ですな」

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