営業職

 お久しぶりです。一年くらい前までお世話になってた〇〇です。現在は通信課程の大学を卒業し、〇〇のメーカーの営業として働いてます。まさか自分が営業職につくとは思ってもいませんでした。正直今も相変わらず人前で話すのは苦手ですが、それを克服したいという思いの方が強くなり営業として働いています。こうして働けているのも本当に大和さんのお陰だと思います。本当にありがとうございました。先日初任給を頂いたので、拙いものですがお菓子を送らせて頂きました。よければ召し上がって下さい。    この青年は2度我が家にやって来て数日一緒に過ごしたから、こうしてメールの内容を披露することを許してくれると思う。以前にも紹介したから、繰り返しを避けるが、大都会に住んでいて、繁華街ですれ違う人たちに「臭い」と罵倒し続けられた青年だ。そのせいで公共機関に乗ることが出来なくて、スポーツ用の自転車を21時間こいでやってきた。すぐに帰すには気の毒だから泊まって行く様に促し結局は数日滞在した。最初に来たときには、かの国の女性たちとフェリーに乗って高松に行き、2度目に来たときは、結構息子が親切にしてくれた。それらの力を借りながら漢方薬で治ってくれたのだが、今日のメールを読んで僕の家族が全員喜んだ。  と言うのは結構好青年だったのだ。娘に「〇〇君はまじめだったから、よかったね」と言わしめるくらい、純粋な青年だった。ただただ人が苦手だっただけなのだ。それも家庭の事情でそうなっただけなのだ。「彼が治ればガス漏れの全員を治すことができる」くらい重症だったが、彼を治しても治すことが出来ないガス漏れの人がいっぱいいた。ただそれらの人と彼の違いは、僕のところにやって来ることを楽しみにしてくれるくらい我が家を好いてくれた事だ。3度目は、息子の家族が3階を占有したから泊めて上げれなくなって断ったが、我が家の敷居が彼にとっては低かったってことだ。だから色々な話をすることが出来た。興味本位で一度だけ注文してくる人たちとは圧倒的に治したい気持ちが違った。そしてそれに向かって努力もした。  僕は年に2回かの国の女性達を連れて彼の暮らす大都会に行くが、それこそ岡山駅から新幹線で70分くらいかかる。牛窓からだと3時間かけていくところを彼は自転車をこいで21時間かけてきた。どうしても治したかったのだろう。敢えて、不得意な営業を選択したのも同じ気持ちからだと思う。自分の一番苦手な場所でしか治らないと言う助言を実行してくれたのだと思う。  こんなメールをもらうとまたぞろ無料民泊を始めたくなる。実際に会って多くの言葉を交わし、少しずつ真実に近づく。そうすると青年達の貴重な時間が、彼ら自身のものになる。彼らには奪っていいものも、奪われていいものも無いのだ。虚栄を脱ぎ捨て、虚構を壊してありのままに暮らして欲しい。