跋扈

 経済が混沌としていて薬局も例外ではないらしく、漢方のメーカーが若手薬剤師を集めて時事講演会を行った。娘がそれを聴きに行って少しだけ内容を教えてくれた。詳しいことは聴いていないけれど、又僕に伝える必要もないので、余程印象に残ったことだけを話したのだろう。  講師の薬局経営者は、大都会のホテルの中に薬局を構えていて、1日5人だけを応対するそうだ。まず相談料として1時間1万円もらい、煎じ薬を出して、1日分が1400円だそうだ。薬局が作れる処方は決まっていて、どの処方を作ってもそんな値段が付くはずがない。田舎なら400円あればどの煎じ薬でも作れる。同じものを作って1400円とは、その講師が言う付加価値を大きく逸脱している。付加価値は、薬が効く確率を高めることでしかつけれないと思うのだが、値段を高くすることが付加価値とは呆れる。また、相談するのにお金をもらうなんて開いた口がふさがらない。何の裏付けがあってお金がもらえるのか知らないが、太木何とか言うおばさんか、江原焼き肉のたれかしらないが、あちらの世界の話になってしまう。  その後、幾人かに別れてお互い意見を交換したらしいが、その中で参加者の嘆きは、漢方薬だけでは食っていけないし、処方箋調剤は儲からないと言うことだったらしい。娘は、如何に安くてよく効く漢方薬を作るか勉強していると言ったらしいが、皆さんきょとんとしていたらしい。漢方薬だけで、処方箋調剤だけで、OTC薬品だけで食って行くことが薬局の理想ではない。その理想は、オーナーの理想であって、患者さんの理想ではない。何を使ってもらってもいいから元気になればいいのだ。漢方だろうがサロンパスだろうが、病院の薬だろうが何でもいいはずだ。だから薬局は全てのことに対処できなければならないのだ。何万円も払えるブルジョアだけ相手にするのが薬局でもない。300円しかないけれど風邪を治してと頼まれたり、病院で治らないから治してとか、処方箋の薬を作ってとか、何でも屋でしかあり得ないのだ。厚労省だってその様に考えていたはずだ。ところが経済至上主義がこの世界も覆ってしまって、門前薬局やカリスマ薬局が跋扈するようになってしまった。何でも屋でそこそこが丁度いいのに。