「2年間、全く効かないけれど、何かに頼らざるをえないから仕方なく飲んでいるんですが、漢方薬で良くならないでしょうか?」と尋ねて来られた。2年間、朝目が覚めてから寝るまでめまいがして、横になっている時が少し楽だから、概ね横になっているらしい。先生には、このめまいは治らないから、うまく付き合っていくしかないと言われているらしい。
 めまいと言う言葉を連発するから、受け取る側としては回転性のめまいを連想しがちだが、要は上を向いたり下を向いたり、振り返ったりしたときに起こる一瞬のふらつきだ。こうなると先生が出しているめまい止めでは何ら貢献できないだろう。改善を期待して漢方薬を作ってお渡ししたから2週間後が楽しみだ・・・・が今日のテーマはこのことではない。
 岡山市に住むこの方は、当然バスになど乗れないから息子さんに車で連れてきてもらった。僕が相談机に腰掛けた時には、息子さんは丁度僕から死角になる所に腰を掛けていた。
 お母さんの相談の後僕は調剤室にこもったが、席を移動して同じベンチに腰掛けた二人の話し声が聞こえて来た。大きな声で楽しく語らうことが、僕が調剤をしている10分くらいの間ずっと続いていた。カルテには87歳と書いてあり、又、息子さんが運よく定年退職して家にいるから連れてきてもらえたと言う話から、いったい何歳の息子さんとこんなに仲良く喋れるのだろうと興味を持った。
 めまいの体操を伝授するために息子さんを呼ぶと、当然と言えば当然だが初老の背の高い男性だった。「これであんなに楽しそうに会話が弾むの?」が僕の印象。確かに87歳にしてはすごく冴えている方だなと思っていたが、どう育てたらあんなに仲の良い関係を維持できるのだろうと驚きだった。唯一聞き取れた「特急やくも」を糸口に「やくもでどこに行くの?」と尋ねると「息子が定年の記念にやくもで旅行に行くんですが、私のめまいが治ったら一緒に連れて行ってもらうんですが」と言われた。その約束を果たせるように頑張りますと答えたが、その意欲を掻き立てれるくらいの稀有な人間関係を見せていただいた。
 この光景が世の常で、僕が歪?

https://www.youtube.com/watch?v=ckLz5XUVNeE