血圧

 この1か月くらい、ずっと気になっている女性がいる。僕の判断が正しかったのかどうかといまだ迷っている。
 おなじ牛窓町の方なのに初めて見た人だ。血圧が高くて漢方薬を希望されてきた。血圧を測ってみると、僕の考えでは明らかに危険区域だった。この方に悠長に漢方薬を作っていたら、効果が出てくるまでに脳卒中心筋梗塞でも起こしそうに思えた。僕の薬局人生の中でも、そういった方を目撃しているので、自身が戒めている水準がある。これ以上は手を出さずに病院に紹介すると言う基準だ。
 女性は僕の漢方薬で血圧を下げてくれると思ってやって来ている。僕は、そのタイミングでないことを危惧している。この両方を満足させるために息子に詳細を連絡して対処してもらった。基本的には町内のお医者さんを紹介するのだが、煎じ薬で動脈硬化を世話できることを体験的に知っているのは息子だけだろうから、本来は漢方希望で来られたけど、危険だからよろしく頼むと彼に連絡した。
 女性は当初、なぜ漢方を標榜している薬局が現代薬を勧めるのか戸惑ったみたいだが、僕の説得が実って、その足で息子のところに行ってくれた。ただし、本当に彼女の要求にこたえたのだろうかと言う疑問がずっと頭の隅に残った。
 今日以下のような文章を読んで、ますます気になりだした。むしろこの文章の考えに近かった僕だが、彼女の最低血圧のあまりの高さにたじろいだのだ。
 いずれ息子が煎じ薬の処方箋を書いてよこすだろう。それで現代薬を飲まなくて済むようになれば、僕の懸念が一つ消えるのだが。


 いくら血圧「上が130未満」の降圧目標は厳しすぎか 製薬会社の事情が生んだ数値との見方も
「そもそも血圧は測ったその時のもので、季節によっても違うし、1日のうちでもかなり変化します。『白衣高血圧』の言葉があるように、医師や看護師の前など病院で測ると緊張などのため高く出がちでもあります。最近は『家庭血圧』を気にするほうが重要だと考えていて、それが世界的な流れでもあります」
 では、「上が130未満」の降圧目標はなぜ設定されたのか。大櫛氏が続ける。
 血圧の基準値が下げられれば、その分だけ多くの“患者”が出現する。その過程は、新たな降圧剤が開発され、売り上げが一気に伸びた時期と一致するという。降圧剤を多く売りたい製薬会社による医療側へのアプローチが、この状況を生んだとの見方もある。
 大櫛氏は著書などで130といった降圧目標に向けて薬で治療した人たちは、むしろ死亡率が上がるといったデータを提示し、警鐘を鳴らしてきた。
 では、適正な血圧の数値とはどれくらいなのか。大櫛氏が全国70万人の健診結果から検証したところ、高齢であれば「上が165程度」が上限とみられるという。
 「65歳以上は165くらいまで大丈夫。血圧を下げる必要はないと考えられます。そもそも、こんなに健診を重視しているのは、国際的に見ても日本くらいのものです
大事なのは患者の価値観
 東大医学部卒の医師・大脇幸志郎氏も「血圧を下げる効果は想像よりもはるかに小さい」と言う。
「確かに血圧の数値を下げることが、将来的な心筋梗塞脳卒中のリスク対策になる部分もあるでしょう。ただ、年齢や喫煙の有無など、病気のリスクが血圧以外にもたくさんあることを踏まえると、薬で血圧を下げることの効果は、皆さんが期待するほど高くない。
 さらに大脇氏は、「薬を飲んだ際の副作用のリスクにも注意が必要」と語る。
「特に高齢者の場合、薬で血圧を下げる場合は立ちくらみやふらつきが出やすくなる。一部の降圧剤には副作用として筋肉を弛緩させるものがあり、足に力が入らなくなる可能性がある。すると骨折などが原因で車椅子や寝たきりの生活になるかもしれず、副作用のリスクを考えることはとても重要です」(同前)
 血圧の数値に向き合ううえで最も大事なことは何か。大脇氏が続ける。
心筋梗塞脳卒中は長生きをすればいつかは罹患する病気であり、血圧の治療をすれば劇的に変わるとの証拠もありません。それに対して時間やお金を使うかどうかは、ご本人の価値観を優先して考えていい。
 血圧の「数値」をどこまで気にするか。決めるのは患者自身だ。

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