要求

 同時多発テロならぬ、同時多発電話だ。
 昨日ある女性の相談電話を受けていたら、もう一つの電話がかかってきた。当然僕は出ることができないから相談を続けたのだが、相談が終わってからもう一人の電話の主の薬を作ってと頼まれた。なんと、もう一人のほうはその女性のご主人からだった。携帯電話が普及しているから、こうした偶然も起こりうる。家庭電話だけの時ならこうしたことは起こりえなかっただろう。
 土曜日ごとに他県から手伝いに来てくれる薬剤師が、カルテが古いことに驚いていた。もちろん新しい方のはきれいだが、焼けて茶色になったやつも散見される。日付を見てみると30年以上前からのもある。もちろんその場合は、親子2代というのも多い。
 この家族は、現在5人の薬を作っている。如何に漢方薬が日常の何気ないトラブルにも使えるかって証明になるくらいありふれたトラブルに使っている。難病奇病に使うのが漢方薬ではない。難病奇病は大病院の仕事であり、たかが薬局が手を出せるものではない。僕らは日常のちょっとした不調をお世話できればいいのだ。ちなみにその時の奥さんの相談は、大阪で暮らすお嬢さんがコロナにかかりにくくしてほしい。ご主人は、人前で緊張しなくなる漢方薬を作ってほしい。要求が素朴でいい。僕もそんな漢方薬が欲しい。