お礼

 口に出せばお互い泣けてくるから、飛行機の中で読んでもらうように約束してこの手紙を渡す。日本語が完全に理解できないかもしれないから、通訳に訳してもらい母国語も添える。半年毎にこうして見送り、又同時に迎える。何度経験しても別れはつらい。ただ、多くの経済的なお土産を持って凱旋する彼女達の喜びを知っているから、喜んで送ることは心得ている。  数日前、自分達で開いたお別れパーティーの時に20人近い娘たちが集まって僕のことを話してくれたそうだ。「お父さんがいなければ、私たちは 牛窓とスーパーがある邑久町と、岡山駅しか知らない。お父さんのおかげで京都も姫路城も福山のバラ祭りも、神庭の滝も、丸亀城も、四国村も倉敷も行けた。そして和太鼓やベートーベンのコンサートも何回も行けた。シアワセ」通訳がみんなの会話をまとめて教えてくれた。その都度嬉しそうにお礼を言ってくれるが、こうして間接的に聞くと数倍嬉しかった。今まで僕がやってきたことが少しは役に立っていたんだと確認できたことが嬉しかった。本当は心地よい交流で僕の日々の緊張を解きほぐしてくれていて、お礼を言わなければならないのはこちらなのに。

〇〇ちゃん、3ねんかん ごくろうさまでした。 よくがんばりましたね。はじめてきたときに ベトナムのはなしをして なかせてしまいました。 でもそのあとは いつもたのしく わらいごえでいっぱいでした。  3ねんかんの けいけんを たいせつにして これからも すばらしいじんせいを おくってください。 まわりのひとを いつもえがおで。 いつかまた あえるかもしれません。 そのときまで。 〇〇ちゃんにあえて おとうさんは しあわせでした。 にほんの おとうさんより

□□□さん 3ねんかん ごくろうさまでした。 いつも あなたの えがおに なぐさめられていました。 あるいているときに すぐにうでをくんでくるあなたは まるでほんとうのむすめのようでした よいかていを きづき ひとをたすけ くらしてください。 せいしゅんじだいの にほんの けいけんが やくにたちますよ いつかまたあえますように にほんのおとうさんより

△△△△さん 3ねんかん ごくろうさまでした。 あなたは にほんじんが わすれている やさしさや けんきょさなどを もっているひとです きっと これからも おおくのひとにあいされ しあわせにくらしていけます いつまでも そのこころを もちつづけてください いつかまたあえますように 3ねんかんの たのしい じかんを ありがとう にほんのおとうさんより

▽▽さん 3ねんかん ごくろうさまでした。 よくがんばってはたらきましたね。あなたが かぞくのために いっしょけんめい はたらいていたのが よくわかります きっと よい おかあさんなのでしょうね これからも しあわせに くらしてください 3ねんかん フンさんのおかげで たのしかったですよ にほんのおとうさんより