敗者復活戦

 「全国の藤が咲き競う、日本一の藤公園」と銘打ったパンフレットを切符と引き換えに頂いたが、僕には藤の種類がそんなに多いことは分からなかった。ただ定番の紫色のほかに、白に近いものと、形が幾分変わっているものの3種類しか違いは分からなかった。どれを見てもほぼ同じ、公園の管理者には屈辱的な僕の感性で申し訳ない。  ドイツの森のチューリップで味を占めたのか、藤で名高い和気公園を見つけたらしい。どういう手段で見つけたのか知らないが、正に今しか楽しむことが出来ないから、ピンポイントで探し当てたことになる。情報網が整っているかの国の人たちだから、そちらのほうから仕入れた知識かもしれない。  僕は29日の藤祭りの和太鼓を聴きに行く予定にしているから、今日は全くの予定外だったのだが、チューリップ組に漏れた人たちの敗者復活に協力しないといけない。どんな理由にしても、何度か足を運んでいると、少しは花を愛でるこつも覚えてくる。いたずらに歩き回るだけだったのが、棚から延びてくる可憐な花に顔を近づけ、匂いをかいだり、造りを観察している自分がいた。今まででは考えられないような自分には不釣合いな姿だ。かの国の若い女性達に感化されたのか、公園に来ていた花を愛する沢山の人たちに感化されたのか分からないが、自然にそうしてしまっていた。  2週連続で落選した人たちの2回目の敗者復活戦は、来月15日の福山バラ祭りになる。まさかこの歳で花巡りをするとは思わなかったが、この歳だからこそ出来るようになったのかもしれない。体の不都合さえなければ年齢を重ねるのも悪いことではない。知識と経験が積み重なれば、見えないものも見えてくる。見たくないものも見えてくるが。