不幸

 なんて皮肉だろうと思った。こんな偶然があるのだろうかと、ニュースに接した多くの薬剤師は思ったに違いない。事実、急遽犬の漢方薬を作りに来た薬剤師も知っていた。  今医者が日本中に何人いるのだろう。そして薬剤師が何人いるのだろう。どちらも恐らく何十万人と言う単位で免許を持っていると思う。だから歩道に猛スピードで乗り上げた医者と、そこを偶然通りかかった薬剤師が遭遇する確率は、何十万分の一掛ける何十万分の一だ。もうほとんど宝くじの確率で、無いに等しい。そんな確率であんな不幸に出会うのだから、何が起こるかわからないのだ。もっともその確率はまだまだ色々な要素を考慮しなければならないから、限りなくゼロに近い。それなのに何故と家族の方は問うてしまうだろう。  何が原因かまだ分からないが、駐車場から出て50メートルで居眠りをするほどの睡魔ってあるのだろうか。あれだけの事故を起こして「何が悪いんだ」と居直れる人間が医者をしていたのだろうか。警察官数人に取り押さえられなければならないくらい事故を起こした人間が凶暴になるのだろうか。脂ぎった顔はどうのような日々の積み重ねなのだろうか。薬も酒も検出されないみたいだから、事実を追求して、それに続く人間が出るのをぜひ防いで欲しい。いつだって誰だって加害者に簡単になれる時代、皆で防がなければ不幸がまた街に咲く。