熱中症

 熱中症を自覚したことは過去3度くらいある。小さなものは除外して「やばい」と思ったのが3回だ。  もう10年以上前、神戸で行われた漢方の勉強会に参加して、やっと午後7時半のバレーの練習に間に合った。食事を摂る時間がなかったので、ビールを引っ掛けただけで参加した。真夏でいつものようにタオルを首からかけて練習を始めたのだが、ある一瞬を境に、吐き気とふらつきと倦怠感と・・恐らく他に症状があったのだろうけれど、このままでは倒れるという予感がした。当時熱中症は今ほど話題には乗らなかったが、なぜか自分でも熱中症ではないかと気がついて水道水をがぶ飲みした。そして程なく回復してまたバレーに興じた。タオル1枚では足りないくらい夏には汗をかいていたから、ビールによる利尿効果で水分の貯金がなかったのだろう。あっという間の悪化に驚いたが、体験したことで以後はそこまで「やばい」ところまでは行かなくなった。  ただ体力は確実に落ちてきているのだろう。その後かなりの症状に2回襲われている。いずれもかの国の女性達を県外に連れて行ってあげているときで、一度は真夏の清水寺、一度は四国村だ。バレーのときの経験で以後は大体熱中症だと自覚できるから、水分を慌てて摂るが、どうしても遅れがちになる。その理由は熱中症になどなる自分が許せなくて、それを認めたくないからぎりぎりまで粘ってしまうからだ。その挙句かなりの不快感に襲われる。それどころか、そっとポケットに忍ばせている救急時の漢方薬(1回分が3000円する)に頼らざるを得なくなる。  高校生まで夏休みの40日を毎日海水浴で過ごしていたあの頃の体力は何処に行ったのだろう。色白の夏男を自認していたが、今や下手をしたら新聞に載りそうだ。夏が過酷になったのか、体力がなくなったのか、或いはその両方か。  嘗てはパチンコの熱中症で青春を褪せさせた僕も、今度は人並みに本物の熱中症に襲われるようになった。