鰹節

 まるで鰹節だ。叩けば金属音がしてきそうだ。そう言えば色も似ている。どれだけ紫外線に曝露されればここまで色が黒くなれるのかと思うくらいだ。強靭なんだろうなと思わず見とれていた。  ある相談でやって来た男性だが、患部は明らかに負荷の掛けすぎだ。だからそれを病気とは言わない。無理のしすぎ、いや、無茶のし過ぎと言った方がいいかもしれない。自業自得、確信犯、どれもあたるが、本人にはそれをやめる選択肢はない。傷めた原因を毎日繰り返しながら治してくれと言うのだから、まるで少年のような回復力がないと難しい。  当然僕は考える。効かないものは作りたくないから、何とかなると思えた時だけお手伝いをする。もし回復させてあげられたらかなり喜んでもらえる。人生をかけている事があり、正に邁進しているのだから、こちらもやりがいがある。自分がとても出来ないような活躍をしている人の手伝いは、その人を通して僕の行為が何百倍も何千倍にも役に立てれることになる。いわば便乗して喜びを拡大する。そんな出会いがあるのが漢方薬を勉強してきた最大の恩恵かもしれない。  漠然とした文章で申し訳ない。わざとぼかして書いた。その男性が「実は僕は〇〇の日本チャンピオンなんです」と教えてくれたばっかりに、具体的に書けなくなった。とにかく、極めた人のすごさを至近距離で見せてもらった。と言うより触らせてもらった。まるで鰹節だった。