故障

 何のメリットがあるのかわからないまま息子に言われてフレッツ光に換えた。どうやらインターネット経由でカラオケができるらしいが、全く興味がない僕には、恩恵はない。また、インターネットが速いとうたわれているが、そもそも薬局の隣がNTTの中継局なのだから(距離にして10メートル)元々速くてこれも恩恵には浴せないと思う。  工事をしてもらって1週間が過ぎた頃から、なんとなく調子が悪くなった。ある時間使えていたのに急に接続できなくなる。それも往々にして夜の間にその故障が起こり、朝から慌てて娘婿に直してもらうことが続いた。直してもらってもすぐ使えなくなるので最終的には、NTTに連絡した。すると、設置のときに来てくれた数人の中の二人が来てくれた。僕と一回りも違わないような方だが、てきぱきとパソコンや配線を扱う。あの年齢でよくもあんなことがわかるものだとほとんど尊敬の眼差しで作業を眺めていた。  それにしてもやたら宣伝しているフレッツ光もたいしたものではないんだと落胆気味だ。「コレッテ光?アレッテ光?」と疑いたくなるくらいだ。傍で見ていて「ソレッテ光」と声をかけたいくらいだった。カラオケ大好き人間の息子はデレット光状態だし、敢えて換える必要がなかった僕はフレッツうっかりを反省した。傍で見ていた妻はどうも僕のフレッツゆっくりが許せないらしくて、フレッツ怒り状態で、フレッツしっかりと急き立てる。  結局は2時間くらい色々な作業をしてくれて、納得が行く状態にしてくれた。そして帰る前に、以前インターネット用に配線をしてくれた2階を見せてくださいと頼まれたので案内した。すると2階で、ある機械を見つけた。専門用語が分からないので説明に困るが、恐らく無線で飛ばす道具が、有線と同じところにあって、機械が混乱しているのでしょうということだった。インターネットの不具合の犯人は、息子がカラオケをしようと四苦八苦したことだったのだ。NTTさんごめんなさい。  実は我が家はNTTの大ファンで、少し前まで、数ある下請けが子会社を隠してまるでNTTであるかのような勧誘電話をしばしばよこしてきていたのに閉口していた。最近はその手の勧誘がなくなったのでわずらわしくなくなった。とにかく何か欲しいときも何か困ったときにもNTTしか相手にしないようにしているから、不都合なことに巡り合ったことはない。今回のことも何のいやな顔もせず、懸命に原因を探ってくれ、狭いところに体を入れ窮屈な体勢でよく仕事をしてくれた。帰るときに感謝の言葉を何回か口に出したが、果たして気持ちは届いているだろうか。今の僕の気持ちはフレッシュ光。