意味深

 「先生の所にも、あるんですか?」と意味深な顔をして聞くからすぐに分かった。ただ僕はテレビで芸能人のことで話題になっていることは知っていたが、何で話題になっているのかは知らなかった。だから漢方問屋の専務さんに薬品棚を指さしながら聞き返した。「アンナンカ?コンナンカ?マンナカカ?マルナカカ?」と。  有名人は辛いものだ。若いときの感性が何かを偶然生み出す事はままあることだ。ただ残念ながらほとんどの場合、創作のための感性は年齢と共にかなりのスピードで衰える。その衰えを何かでカバーしたくなるのだろうが、歌い手ならやはり誰かの歌でカバーしなければプロではない。薬で、この字をどう読むかでかなり内容は異なるが、カバーしたら歌い手の名が廃る。  無名人は楽なものだ。若いときから感性などとは無縁だから何も生み出さない。傷をしても生みもしない、いや膿もしない。ただ残念ながら、元々ないところから衰えるのだから、徘徊することしばしばで捜索されることは多くなる。その衰えを何かでカバーしたくなるのだろうがアリセプトの副作用で時に凶暴になる。温厚な母親に飲ませ、その豹変振りに驚いて以来、患者さんが飲んでいるのを見ると心配になる。安心して飲ませるのが薬剤師の使命なら、そこで躊躇している僕は薬剤師の名が廃る。  よし、アンナカ飲んで勉強するぞ。効果はドンナンカナ、アンナンカナ!