問題

 関東に住む男性からあるトラブルの相談があった。相談主は初めてだったが、嘗て岡山在住のお母さんを漢方薬で僕が世話をしたそうなのだ。幸いお母さんがとても良く改善して、息子さんに、僕に相談するように助言したらしい。お母さんとよく似た症状で病院にかかっているが何故か改善しないらしい。何故かというのは彼の感想ではなく、主治医の感想だ。現代医学ではそんなに難しくない病気なのに、同じ病気を3回も繰り返していて、医者が不思議だと言うらしい。今は簡単に効く薬が開発されていて、その病気で手術する人が激減しているのに、彼にはその薬が効かないらしいのだ。食事が美味しくとれないから痩せて、体力も落ちているという。  僕にとってそんなに頭を抱えなければならないような症状ではなかったので、2週間分漢方薬を作って送った。最初は少しだけ効いたが、喜んでもらえるほどではなかった。2週間分を飲み終えて経過を報告してくれたとき、処方を決める上でとても重要な情報を彼がつぶやいた。そこで処方を変えて2週間飲んでもらったら、医師が再び同じ言葉、不思議、を口にしたそうだ。彼の不快症状が一切消えたのだ。本人はただただ喜んでくれたが、医師は「不思議」という言葉を使ったらしい。  今日、お母さんが3回目の漢方薬を取りに来たが、とても喜んでくれた。東京にいる息子に薬を送ってやることくらいしかできないが、母の愛情は、僕に向かって様子を教えてくれるときの真剣な眼差しで伝わってくる。僕は今回の問題解決は、母が子を思いやる心が全てだったような気がする。既に成人して活躍している息子を気遣った母の愛だと思う。僕は淡々と与えられた問題を解いただけだ。孤立無援でもがいている青年と接することが多い僕に、世の中がまだすさみきっていないことを教えてくれたケースだった。