靴底

 「厚生労働省は17日、重い生理痛の治療薬として処方される低用量ピル「ヤーズ配合錠」(バイエル薬品)について、2010年11月の販売以降、副作用とみられる血栓症で3人が死亡したと発表した。最初に報告があったのは昨年6月。20代女性の脳に血栓ができ、薬を飲み始めて13日後に死亡した。2人目は死亡後に肺に血栓が見つかった10代前半女性で、今月には肺と足の血栓症による40代女性の死亡が報告された。低用量ピルは生理痛の治療や避妊目的で利用者が増加。ピルは血栓が起こるリスクを3~5倍引き上げるとされ、厚労省によると、ヤーズ以外のピルでも04年以降、因果関係が不明なものも含め10人の死亡が報告されている」  10代、20代と言えばまだまだ人生を謳歌していない助走期間だ。まだ飛び上がっていない人が、眼下の景色を見ることなく急に亡くなる。40代の人だって、まだまだ山登りの途中だ。山頂からの景色を知らずにこれ又予期せぬ死を迎える。薬を研究し、薬を製造し、薬を処方し、薬を飲んだ。どこにも悪意は存在しないのに命を失う。世の中には、社会には、人生には不条理が大きな口を開けて待っている。  「歯がゆいでしょう」僕が皆さんと話をしているときによく使う言葉だ。意図しているわけではないが、相談者の表情を見ていると自然に沸いてくる。体調の不愉快さにみんな耐えているが、どうして私がと思ってしまう。その思いが顔に出て僕にあんな言葉を選ばせる。痛み、倦怠、痒み、消化器系、呼吸器系・・・どんな症状でも何故私がと思ってしまう。つい思ってしまうのだ。その極めて人間的な感情を僕は症状を消すことによってとってあげたい。そう思うことを否定するのではなく、原因をとってあげたい。懸命に精神を崩さないように強く明るく振る舞ってしまう人達の歯がゆさをとってあげたい。医師ではないから命は救えないが、日常の歯がゆさ程度なら軽減してあげれる。庶民の歯がゆさを靴底で踏みにじるような今の政治屋のように無知で残酷にはなれない。