発見

 丁度出かけようとしていた頃、息子から電話があり、蚊が多いからスキンガードを持ってきてくれと頼まれた。確か西脇の海水浴場でバーベキューをすると言っていたのに、頼まれたのは近くのヨットハーバーだった。 ヨットハーバーに行くと、イベント広場から岸壁に出る小道の両脇の芝生の上にテントが張られ、その下には大きなテーブル二つと椅子が10個以上並べられていた。傍にはバーベキュー用のコンロが出番を今か今かと待っていた。息子は2時間近く前に西脇の海水浴場へ出かけたのだが、風が強くて張ったテントが飛ばされて急遽、このヨットハーバーを思いついたらしい。さすが子供の頃よく遊んでいた場所だから、後ろの山が風を遮ることも計算したのだろう。確かにテントは等間隔で植えられている広葉樹にも助けられて、びくともせずに立っていた。  昨日の日曜日に、職場の人とバーベキューをすると数週間前から言っていた。時々道具を買って帰っていたが、テントや椅子まで持っているとはしらなかった。これだけ道具があればどこにでも行けるのではないかと思った。又親子でこんなにも違うのかとも思った。僕はとにかく遊ぶことや食べることにほとんど興味がなかったから、何も持たない、何もしないに徹していた。それは決して苦痛ではなく僕にとっては一番楽な生き方だったのだ。  息子は3時間も前から一人で黙々と仲間のために一人で準備していたのだ。恐らく若い女性が多い職場の仲間達は席に着くなり美味しい焼き肉を楽しめるだろう。自分は車で行くからビールも飲まないと殊勝なことも言っていた。こんな場合、食べて飲むだけの僕とは大違いだ。 それにしても彼らの職業はストレスが多いのだろう、こうした息抜きを良くやる。僕は週1回バレーボールをしていれば何十年も持ったが、彼らはそうしたものでは解消できないのだろうか。飲んで食べて喋ってがストレス解消になることを僕はほとんど経験したことがないから、その効果の程を知らないが、何となく少ない経験からでも、お釣りも結構多かったことを経験している。心のお釣りか胃袋のお釣りか倦怠感のお釣りか分からないが、結構それは負担だった。  夜帰ってみると、牛窓町のゴミ袋数個分の宴の後が駐車場にあった。水道の傍にはバーベキューで使った道具が綺麗に水洗いされていた。これだけしてあげれば同僚達は喜んだろう。決して息子が招待したものではないのだが、気さくにこんなことが出来るんだと今まで見たことがない発見をした。