問診

 主にプライマリ・ケアの外来患者を対象にした研究で、「問診で患者から詳しい情報を聞き出せば約86%は診断がつき、身体診察を行うと6%情報が増し、さらにX線検査や血液検査を行うともう8%情報が追加される」という報告があるそうだ。これは診断の9割近くが問診で付くことを意味する。診察や検査は問診で付いた診断を裏付ける場合がほとんどで、診断を変更するほどの情報をもたらすことは滅多にないということだろう。まれな病気が多い専門外来などでは、ここまで高い数字は得られないだろうが、問診がいかに重要かを裏付ける研究データである。

 上記のような記事を今日見つけた。なるほどそうだったのかと納得した。もし上記の記事が的を射ているなら、最近の医者は検査結果ばかりを信頼するという風潮が危惧される。問診を丁寧にしていないとすると、86%の診断の部分が欠落したことになり、残り14%に命を預けているとなると空恐ろしくなる。  まあ、そんなことより僕達薬剤師にとっては朗報だ。医療器機をほとんど使えない僕達にとっては、問診は命綱だ。と言うより全てだ。これがなければ僕達は漢方薬を渡すことは出来ない。だから長い間とにかく相手に問い続けて、病気や人間の傾向を掴むことに努力した。多くを尋ね、多くの法則を掴み、その結果としての漢方処方を選択する技術を磨いてきた。本を見れば、病気と漢方処方をまるで問題と答えのように載せているが、実際に薬局に相談に来る人の苦痛を整理して処方まで結びつけるのは経験が必要だ。寧ろこここそが全てのような気がする。何の不都合が生活の中にあり、何の不都合が心や体に現れたかを見つけることが出来なければ本当に効く処方までたどり着くことは出来ない。歳はとりたくないが、歳をとらなければ分からないことがあり、それは決して教えられることではなく、患者さんの繰り返しの応対でつかめるものだと思う。  僕を知っている人は驚かないかもしれないが、初めての人に「自分は・・・・?」と言った感じで問診をするので、信頼しづらいかもしれないが、毎日何十人と、30年以上話し続けた実績はほとんど無形文化財だ。どうぞお偉い方「表彰してけろ」