君臨

 人間が君臨するのはあちらにとっては迷惑な話だし、お墨付きを貰っているわけではない。だから猫が生ゴミを狙って駐車場に忍び込むのも、カラスがツバメの卵を狙って巣を壊すのも、自然の道理でこちらにとって不都合だからと言う理由だけで、悪者呼ばわりは出来ない。それにしてもその二つがほとんど同時に行われたら結構頭に来る。  どちらもこれでもかというくらい考えて方策を採っているが、一昨日どちらもやられた。まず猫の方だが、ホームごたつの天板、それも大きめのこたつのものだからかなり重いものを、入り口に垂直に立てているから、猫がそれを押しのけて侵入できるはずがないと思うのだが、結構な確率で中の生ゴミを入れたゴミ袋が漁られている。いったんゴミ袋に入れている残飯を破られ散乱したのを片づけるほど、いやなものはない。美味しく頂いた名残がある間は臭いとも汚いとも思わないが、日をおいてからそれを眺めると、臭いわ汚いわで息を止めながらの作業になる。 昨年はまんまとしてやったりだったので今年は僕も娘夫婦も慢心していたかもしれない。特許をとりたいくらいのアイデアが奏功してツバメをカラスから守ることが出来たのだが、今年は少し油断があった。すだれを利用してツバメの巣をまるで洞窟の中にあるようにしていたのだが、今年はカラスの方が考えたらしくて、うまくすだれの中に入り込んだらしい。もう少しすだれで作った洞窟を小さくしておけばカラスの巨体が入れなかったと思うのだが、後悔先に立たずだ。去年の成功例が仇になった。黄身の跡がコンクリートの上に染みついているのを見たときに、悪いことをしたと思ったし、娘の落胆振りは僕以上だった。  カラスと人間との距離感のなさも、ペットも、どちらもすでに自然のあるべき姿から離れているような気がするが、それ故の不快に悩まされている。本来の関係を失ったものが迷惑な存在に変わる。鹿だの熊だの猪だのと次から次へと候補には困らないが、いずれにしたって憲法まで自由に操り、昔のように若者と貧乏人を体よく殺すことに美学を感じている奴よりはどの存在も迷惑ではない。