翻弄

 面白いなあ。考えられないことだが、恐らくほんの一握りの人間の強欲で、1億の人間をかなり自由に支配できるのだ。嘗ては多くの若者や百姓を殺したし、最近では多くの人達の仕事や土地や家族を奪ったし、次は、多くの人達の勤勉な精神をを奪おうとしている。僅か20年前に経験したことを再び夢よもう一度とばかりに、持てる者達ばかりが甘い汁を吸える世の中に再びしようとしている。 バブルがはじけたのはまだ十分頭の中に記憶している。ついこの前の話だ。田舎の薬局にも高級車で乗り付ける人間がいたが、応対するのもいやだった。その人間達が、あっと言う間に軽四トラックに乗っていた。ざまあみろと思うが、その陰で何の恩恵も受けずにコツコツと働き続けた人達のことは語られることはなかった。アワノミクスか、アホノミクスか知らないが、責められればすぐお腹が痛いという人間や、マスメディアが競って煽っている。まるで福島を忘れて浮かれろと言っているように僕には聞こえる。オリンピック誘致も胡散臭くて、恩着せがましい合い言葉の「絆」は何処に行った。  何年か経てば、又一段と格差を付けられた人達が巷に溢れるだろう。利用され捨てられ翻弄されるだけの人生を強いられた人達が行き場をなくして彷徨うだろう。同じ時代を生きて底辺と呼ばれる辺りに居着く人達が増えるだろう。才能も良心も美徳も、生かされぬまま終える無念が町中を徘徊するだろう。抵抗を教わらなかった世代の悲哀が僕には見える。