それをやってはいけない。禁じ手だ。あるセールスの方が実際に薬局で目撃したこと。 ある薬局?薬店?に2時間毎にやってきて1個3000円する○○丸と言う漢方薬を飲む女性がいる。飲む理由は過敏性腸症候群らしい。もうずっと来ているから当然効いていないのだろうが、そのセールスは「過敏性腸症候群に○○丸は効くんですかね?」と僕に尋ねた。もう彼自身も答えは持っているのだ。僕はその薬の成分を知っているから、勿論用途も知っているから、「効くはずがない」と一言ですませた。何かそれでも価値があるとすれば、高い薬を飲んでいるという安心感だろうが、それでも1日3万円も薬に使っていたら、財布に効いているだけだ。余程金持ちか、精神までも病んでいる人でないと、そんなお金の使い方はしない。 人の商売に口を出すつもりはないが、この程度の知識しかない人が、色々な健康相談に乗っているのかと思ったら恐ろしい。詐欺まがいの無知と言える。単なる悪意ならまだお客さんに見抜かれるからそんなに被害は出ないだろうが、これが単なる熱心なら被害は大きい。少し勉強すればそんな眉唾的な薬を使う必要がないことは分かるが、無知なら色々手を尽くすことが出来ないから、限りある材料の中で妄信的にいつも一つだけを選び出す。 この患者さんはその薬を飲む前に病院にかかっていて、7種類の薬をもらって飲んでいたらしい。そこでの治療もどうかと思うが、逃げ込んだところがこれ又不運だった。僕の所に来ればと、きっとそのセールスも思っているだろうが立場上それは口には出せない。 自慢ではないが、僕の薬局に来てくれる人の99.9%は庶民だ。そのおかげで正しい処方で最短の時間で治してあげなければならないと言うごく当たり前のことが身に付いた。漢方薬の一般的な常識とは全く逆だが、それだからこそこんな田舎でもやってこれた。1ヶ月に90万円も巻き上げる「口」を持ち合わせていなかったから、いい目は出来なかったが、後ろめたさも感じたことがない。この精神状態にお金は勝てない。