性格

「先生、大丈夫ですか?」と尋ねられたが、大丈夫もなにもそれを目的に漢方薬を作っているのだから大丈夫に決まっている。「どうしてそんなことを聞くの?」と逆に尋ねると「肝っ玉をつける漢方薬を作ってもらっているから、私、性格が変わってきたんです」と笑いながら答えた。人前がとても苦手で、他にもあるトラブルで日常生活がかなり制約されている人が人格が変わってきたのならしてやったりだ。「どう変わってきたの?」と僕も興味を持ったので尋ねると「私最近、悪いことをしているような人を見たら頭に来て注意するんです」ととんでもない変身ぶりを教えてくれた。色白でスリムで美人で恥ずかしがり屋が、人の悪態を許せないなんて映画のヒロインみたいだ。 「それは凄いではないの、正義感が出てきたのならいいことだけれど、漢方薬が効きすぎて御法度の裏街道を歩くような人にくってかかるほど肝っ玉はつかないから大丈夫」と妙な慰めを口にした。いやいやそこまで強くなれれば目的の症状は完治だ。脳に侵入することが出来ない漢方薬でどうして気持ちが強くなったりするのか不思議だが、効くのだから仕方がない。理論を越えているが、理論づくめで作られた現代薬が、脳に侵入しながらもなかなか効果を出せない、いやそれどころか副作用ばかりが目立つことも多々あることに比べれば、漢方薬の安全性と確かな効果に感心する。科学が未熟な時代によくそんなことが出来たものだとそれこそ感心する。  肝っ玉が強くなる漢方薬があるのなら、気弱になる漢方薬があってもいいようなものだが残念ながらそれはない。もしそんな漢方薬があれば飲ましてやりたい人間はわんさといるのだが。まず最初はあいつに、2番目があいつで・・・