息切れ

 何気なく朝のワイドショウを見ていたのだが、何か違和感がある。出演者が全員簡素な椅子に腰掛けているのだが、青色の嘗て見た防護服のようなものを着ていた。建物もなんだか牛舎か倉庫の跡のようながらんとしたものだった。震災後1年の今日はどの局も特集を組んで朝から晩まで放送するのだろうが、目にした最初の番組から何故か抵抗があった。 司会が状況を説明するに従ってその理由が分かった。まず驚いたのは、出演者がいるところが、原発から少ししか離れていない避難区域?警戒区域?で何度も何度も耳にする名前の町なのだ。今では誰でも自由に入ることが出来るんだと驚いたのだが、もっと驚いたのは、ひょっとしたら20歳代ではないかと思われるような若い女性司会者もその中にいたことだ。なにもなかったことにしょうと国もあの会社も懸命だから、そして年間数百億円とも言われる広告料をもらっているマスコミも同じ穴の狢だから、意図して安全を視聴者に植え付けるために計算尽くで設定した場所なのだろうが、業務命令で若い女性をわざわざそこに連れていくことは許されまい。将来どんな悪い影響が出るか分からないのに、我が娘、我が孫だったら同じことをさせることが出来るのかと問うてみたい。 あれから怒りが意図的に消された映像を垂れ流されて、まるで正座を強いられているこの国の人は、同じ災難をいずれ又背負うことになるだろう。やられてもやられても耐えることが美徳と擦り込まれた遺伝子に、季節を戻す北風も何故か息切れをしている。