絶望

 逆流性食道炎の方が同じ職場の新人だと言ってある青年を連れてきた。1年くらい前に調子を崩していたのが僕の薬で治ったから、新人を連れてきてくれたのだが、その青年もやはり胃の不快感を抱えていた。2ヶ月くらいコンビニで薬を買っては飲んでいたらしいが、そのコンビニで薬を買うという言葉自体が初めて聞く言葉だから都市部で働いていたのだろうが、その彼が全然よくならないんですと言う。全然良くならないことの方が僕にとっては当たり前に思えるのだが、彼にとっては不満らしい。どう言った会話があって、どう言った薬を買ったのか分からないが、いや会話がないのがいいのだろうから薬の表示を見て買ったのだろうが、治るはずがない。僕は彼の症状を聞いて一瞬にして潰瘍か、その手前くらいな想像はつくから、当然その種の薬を出す。急を要するから5日分だけ渡して、野に放たないことにした。これ以上悪化したら大変だから、無理に少ない日数分しか出さないのだ。逆に5日もあればかなり彼の苦痛を改善することも出来る。 コンビニで薬を売らせるなんて、誰がどの様な富を手にするために画策したのか知らないが罪なものだ。無知を逆手にとって冨を築く。どの業界でも同じだが、庶民の金ばかりか命まで知らないうちに一部の大金持ちに貢がされているようなものだ。偉い人が変わってもなにも変わらないと言う絶望感だけが増殖している。絶望の向こうに又絶望では庶民は何時までも浮かばれない。  「○○円からお預かりします」や「○○円になります」ならまだ我慢できるが、「命までお預かりします」や「治らなくても構いません」とは言わせない。