みのなんとか言う男の朝の番組に彼が出ていた。神奈川県知事と数人のコメンテーターも出ていた。テレビで見ていても、彼は相手の言うことをよく聞いていた。夏以前、多くのタレント気取りの議員達は、自分の無能を隠すために強圧的で饒舌だった。知識に裏付けられた言葉でなく、防護服みたいな言葉だった。身を守るために言葉の鎧をまとっていた。自信のない人間ほどよく喋る。気の弱い犬ほどよく吠えるのと同じだ。 世の仕組みの変化がピンとこない人にとっては、今までのようにおこぼれを頂戴するって構図からなかなか脱出できない。おこぼれの代わりに魂を売っていたのだろうが、売り物の魂もすでに抜け殻になっている。  どうやら僕みたいに子供がいない世帯は税金が増えるらしい。僕は少しくらいかまわないと思っている。毎日薬局に立っていると、若い世代に経済的な余裕がないのはいやと言うほど分かる。現代医学で治らないトラブルになったときに、漢方薬がとてもよく対応できることが多いが、若い世代にはなかなか勧めづらい。どうしても財布の中身を考えてしまうのだ。昔みたいに昇級が保証されているわけではない。年功序列もあてにならない。貯金など出来るわけもない。健康だけが生活を保障できるが、こき使われては健康もおぼつかない。 今まで陽の当たらなかったところに陽が差せばいいのだ。集光装置で光を独占していた人々を退場させ、隅々まで明かりが届くようにすればいいのだ。大きな声の人には耳を貸す必要はない。声を振り絞って訴える人に耳は傾けるべきだ。少なくとも彼は僕みたいなくだらない男の声を忙しい時にでも聞こうとしてくれていた。良い耳を持っているとその時思った。