結婚式

 漢方の世界に入るきっかけを下さった方のお嬢さんの結婚式が昨日あった。奇しくも結婚式が行われているだろう時間帯に、その方が長い間お世話をしてくださった勉強会に僕は出席していた。一方的に僕がお世話になっているので、僕がお嬢さんの式に出席することはあり得ないのだが、奥さんから今日FAXを頂いた。 その中の一文にぐっと来るものがあった。お嬢さんが披露宴で「薬局という環境の中で大きくなったことが私の宝物です」と述べたらしい。3人のお嬢さんが全員薬剤師になったところからして、両親の働きぶりを高く評価しているのだろう。僕と違い、いわゆる漢方キチガイというレベルにまで達していた人だから、恐らく難しい患者さんもお世話していたに違いない。そう言う仕事ぶりを見ていての感想なのだろう。時々道を外れたような患者さんが来ても強かったらしいから、たくましいお父さんも垣間見ていたに違いない。3人のお嬢さん全員が薬剤師免許を取るまで、また今回の初めての結婚式を待たずに亡くなったが、それは彼にとって残念だとは思っていないだろう。世間で、あるいは劇の中でせめて結婚式まで生きてなどと涙を誘うシーンがあるが、彼にとっては目の前の患者さんの方が大切だったはずだ。亡くなる直前も僕らの勉強会に来て自分のことではなく患者さんの処方を考えていた。その姿勢こそが、お嬢さんをしてあの言葉を言わせたのだと思う。 お嬢さん達は薬局を継ぐことはなかったが、薬剤師としての自尊心は充分受け継がれているのではないか。お嬢さんのそう言う言葉が似合いそうな人だった。