公言

 数年前に鬱病で数ヶ月僕の煎じ薬を飲んで治った女性が久しぶりにやってきた。この表現は正確ではないか。お医者さんの薬も当初飲んでいたから両方で治ったのだろう。笑顔一杯で入ってきたから再発ではないとすぐ分かった。チョットした不調の薬を取りに来ただけなのだが、雑談をして帰った。当時雑談をする余裕はなく、勿論作り笑いすら出来なかった彼女だから、別人のようだ。 彼女が不思議なことを言った。私の知っている人で数人、私と同じ漢方薬をヤマト薬局で作ってもらって飲んだと言っていたと。町内の人だから別に珍しいことではないのだが、こと鬱に関してはやはり珍しいのではないか。ごくありふれた不調なら日常の会話に出ても不思議ではないが、鬱となるとまず全員が隠す。公言する勇気はなかなか無いだろう。ところが彼女の知り合い数人が公言している。治ったから嬉しくてと言う次元でもない。常識から考えれば治っても出来れば秘密にしておきたいトラブルだろう。  ところが数人が自分のトラブルを口に出している。想像だが、僕が喋りまくって回りを巻き込んで治したらとしばしば言っていたからかもしれない。自分で解決しようとして出来るものではないから、口からストレスを抜いて、相手に少し分担してもらって治ったらいいと言っていたのを実行したのだろう。だから意外と多くの人が治ってくれるのだ。漢方薬が効いたのか、喋る勇気を出して回りを巻き込んだのが効いたのか知らないが、薬局の名前が出るくらいだから、少しは評価してもらっているのだろう。  この奥さんは旦那が原因だったから「絞め殺したら」と助言したのだが、それは実行せずに治っているから助かった。これが僕が絶対カウンセリングなどと言う高級なことが出来ない理由。