巣作り

 やっぱりだ。かなりの確率でこれは繰り返される。元々下手な上にタイピンももっていないから、まして根性もゆがんでいるから、ここ一番で「ネクタイが歪んでいますよ」と注意を受ける。 本当に珍しく土曜日は1回目にしてほぼ完璧にネクタイが結べた。出発5分前まで仕事をしていたから、急いで身支度をしたのだが、なぜか旨く結べた。気をよくして結婚式に出席したのだが、案の定、全員で記念写真を写す段になって、カメラマンから名指しで注意された。もう慣れているので「すいません、性格が歪んでいるもので」と切り返したのだが、厳粛な雰囲気の中で余り受けなかった。次回からはもっと受ける言葉を用意しておこうと思った。タイピンを用意しておこうと思わないのが僕の特徴かもしれないが、数年に一度しかネクタイをすることがないのだから、もったいない。  それにしても相変わらず、人間の巣づくりは大変だ。我が家の軒先を無断借用しているツバメなど、いとも簡単に巣を作ってしまう。上手下手はあるが、いつの間にか出来上がっている。人間の場合、立派なホテルで立派な食卓で上手な司会者で巣作りが始まる。どのくらい経費がかかっているのだろうとげすの勘ぐりをするが、見当がつかない。自分の時はオートメーション式に言われるがまま何も分からず儀式が終わっていたが、最近では客観的すぎて、まるで評論家のような視点で式に出席している。悪い癖で、感慨よりも評論の方が先に出てしまいそうだ。いとも簡単に別れるパターンが多い時代に、何故こんなに不確かな儀式に莫大な出費をするのだろうかと、老婆心にも似た感覚で見ている。そう言えば、そのおめでたい土曜日に帰ってから、二組の巣作りに失敗した人達の健康相談をした。この方が僕の薬局らしい。