恋愛

 ずいぶんと大人になったなと言うのが印象だった。半年か1年会っていないだけだと思うのだが、病気を克服すればここまで落ち着くのかと思った。僕の用事に付き合ってもらったが、多くの人と長時間一緒にいて、得たのは好意的な評価だけだった。やっと、大人の落ち着いた女性になったのだ。  岡山に来たついでに連絡してくれたのだが、以前のように話題は身体のことではなかった。僕がもっとも似つかわしくない話題だと思うのだが、恋愛談義で多くの、いやほとんどの時間を費やした。恋愛も結婚も無いと諦めていたのに、手に入れた健康で予定が大きく変わってしまった。好きな人が出来たらしい。相手も好意を持っている。嘗ての癖で、こんな状況でもマイナス思考が溢れるように湧いてくるそうだ。恋愛に理性で臨んだりするものではないと、いつものように低級、且つ単純明快な答えを連発したら大いに参考になったらしくて、帰ってから堂々と思いのままに行動すると言っていた。それでいいのだ。何の遠慮があるだろう。遠慮するくらいなら好きにならない方がいい。押しまくって落ちない男なんかいない。余程持てる男なら踏みとどまるだろうが、福山雅治は滅多にいない。男にとって女性はみんな綾瀬はるかに見えるのだから自信を持って押しまくったらいい。  若くて生命力溢れている人達が、青春の落とし穴に落ちてはい上がる。一回り大きくならなければ割が合わない。彼女は十分割があった。見方を変えればのろけ話だったのかもしれないが、それでは僕は割に合わない。まあいいか、恋愛なんて所詮割り切れないものなのだから。