シルエット

 黄昏の中、ガードレールにすらりとした男性がもたれ、道路に背中を向けている女性と話をしている様子だった。車で通りかかった僕は、一瞬その男性の顔が見えた。数日前、眠たくならない風邪薬を希望して来た男性だ。これから長距離を走るから眠くなったら困ると言っていた。漢方薬で風邪薬をつくって渡したのだが、あの時間帯に外で話をしているくらいだから治ったのだろう。実はその男性が薬局に来た3日前に、初対面なのに自分の名字を名乗って風邪薬をつくってくださいと言った女性がいた。嫁さんは作ってもらった薬で治ったという男性の言葉で、彼らが夫婦であることが分かった。その男性は、僕の記憶だと息子の同級生だと思う。彼も180cmは越えていると思うし、スリムなのもとてもよく似ている。ただ、彼の方が息子よりは数段おとなしい感じがする。人の良さが静かににじみ出ている。決して華やかさはないけれど、誠実さは説明がいらないくらい現れている。きっと、お嫁さんを連れて牛窓に帰ってきたのだろう。お嫁さんも丁寧な若い女性だった。好青年には、それにふさわしい人がくっつくものだと感心する。  きっと、彼が、ヤマト薬局を紹介して、薬を作ってもらうように勧めたのだと思う。高校を出て社会人に成り立ての頃から時々来ていた彼だが、大人になっても信頼してくれていることが嬉しかった。恐らく家の前のガードレールだろう、若い夫婦が向かい合って語り合うシルエットはとても良い絵だった。いつまでもその絵を描き続けて欲しいと思った。