ホームこたつ

 2階のリビングで、ホームこたつを挟んで楽しそうに話をしている光景を見ると、まるで息子が帰ってきたみたいだった。僕は夜もこうしてブログを書いたり、メールの返事を書かなくてはならないから、ほとんど階下の薬局にいるが、妻は2階でくつろいでいる。遠く、中部地方から車でやってきた青年は、過敏性腸症候群の相談にやってきてくれたのだが、我が家には久しぶりの若者の滞在で少し空気が華やいだ。  とてもハンサムな彼だったが、その産まれついたものがきっと彼の苦痛をもたらしている。僕はそれが貴方の不幸だと言った。彼と過ごした3日間で、僕はまだ勇気を出してやって来れない人達の為のメッセージを用意することが出来た。  彼の思い、症状など全部手に取るように分かる。それはまぎれもなく、40年近く前の僕そのままなのだから。いやいや、今なら断言出来る、大なり小なりほとんどの若者が落ちる青春の落とし穴だから。青春前期に始まるナルシシズムは成長の過程でとても大切な要素だと思う。それがあるゆえに向上心も沸くだろうし個性も育つ。ところがナルシシズムは時として限界を超える。超えると今度はそれが牙をむく。自分はこんなにハンサム、或いは美人で誰もほおってはおかない。歌もうまいし踊りも上手、走らせば早いし、歩く姿も格好いい。24時間魅力を振り撒くのは本当にしんどい。魅力が本当に備わっていれば井戸の底は見えないが、元々ないものを勘違いしてあると思っているのだから、その労役や甚だしい。彼には幾つものヒントを出した。とても頭のよい成年だったから、帰ってから想いだし、きっと近い将来克服してくれるものと思う。過敏性腸症候群の人に必要なのは、おなかの漢方薬ではない。背負っているものが軽くなるように心身ともに元気になる漢方薬なのだ。そしてもう1つ、正しい理解。  誰も特殊な人間なんかいない。皆同じなのだ。何回も繰り返すが、誰かが苦しい時は他のほとんどの人も苦しいのだ。誰かが暑い時は他の人も暑いのだ。誰かが緊張すれば他の人も緊張するのだ。誰かが嫌なら他の人もいやなのだ。こんな当たり前のことに気がついて帰ってくれれば完治は近くなる。 IBSは治るというメッセージを発信しつづけたい。かにの甲羅をはずし、身体を半分に割って、箸を突っ込みながら身を食べる野生の食べ方が、彼にはとても受けた。一杯会話をし事実を知ってもらえば、素晴らしい明日が彼には待っている。勿論、まだ会った事もないIBSの人達にも。