幻想的

 今日僕はとても幻想的な体験をした。
 来日したばかりのかの国の女性がフェリーに乗りたいと言うので、お得意の高松に連れて行った。昨日広島に行ったばかりで、さすがに疲れていたので、今日は車で渡らずに、琴電を利用して栗林公園に連れて行った。炎天下、園内を歩き回るのにしんどくなって一人木陰のベンチに腰掛けて皆を待っていた。すると一羽の鳩が歩きながら近づいてきた。1メートルくらいの所で止まってそこから動かない。人間に慣れているんだなと感心してみていたら、僕の足元に歩み寄ってきた。靴から10cmくらいしか離れていない。そこで脅かさないようにあまり身動きしないようにしていたら、ひょいとベンチに飛び上がって、僕のすぐ横に並んだ。目がキョロキョロしているが僕を恐れる仕草はない。毛づくろいをしばしばする。いいのかなと見ていると何と僕の膝の上に飛び乗ってきた。もうそれはそれは感動ものだった。鳩が自分から膝の上に乗ってくるなんてことがあるのだろうか。至福の時間がどのくらいで終わったのか分からないが、次は手すりに飛び移りなにやら僕が持っていた水の入ったペットボトルを気にするそぶりを見せた。何となく鳩が水を欲しがっているように思えたから、試みにキャップに水を汲んで、鳩の顔の前に持っていった。すると鳩はくちばしをキャップの中にいれ、何度か水を飲んだ。
 僕はその間、10分か20分か分からないが、確かにあの鳩と意思の疎通が出来ていた。目の動きをじっと、見ていたから、何となく会話が成立していた。瞬きさえ色々なパターンがあって、僕に何か伝えているようだった。これから僕に幸せが来るのか、世界に平和が訪れるのか分からないが、僕には鳩の声が聞こえていた。