代償

 「アメリカンフットボール選手は、長期的な神経学的傷病、とくに慢性外傷性脳症が増大するリスクに曝されている。慢性外傷性脳症は高校入学前選手では認められなかったが高校選手では21%、大学選手では91%、セミプロ選手では64%、CFL選手では88%、NFL選手では99%で認められた。死亡時年齢中央値は67歳。米国社会において、アメフトは不動の一番人気スポーツであり、プロのアメフト選手は社会の英雄である。その競技人口は900万人にも及ぶとされ、小児期から大学時代まで多くの選手がプロを目指す。慢性外傷性脳症と引き換えに多額の報酬を得る者は一握りのプロ選手であり、多くの一般選手は、自らのグローリーデイと引き換えに慢性外傷性脳症を受容しなければならない。本研究は、華やかなスポーツの持つ過酷な側面を映し出しており、スポーツが原因となる慢性外傷性脳症に対しては、社会の認知と患者の救済が課題となる」    あの強靭な肉体は何処から来ているのかと、そしてあの如何にも健康優良児はどんな幸運で与えられているのかと思うことしばしばだ。年齢とともに、失ったものの大きさにいやが上でも気がつき、与えられなかった不運を嘆く。しかしこの記事を読んでから少しは溜飲が下がった。強靭な肉体も与えられなかった、多額の報酬とは縁がなかった、しかし、耐え難い肉体的な苦痛と同居して暮らしていくこともない。当然人並みの衰えによる不快症状は一杯抱えるが、耐え難い苦痛ではない。  名前は知らないが、頭で回転するダンスがある。高速回転で、どうしてあれで頚椎が耐えられるのだろうと不思議だった。ところが実際には耐えられないのだ。あのダンスをする青年の多くが頚椎を傷めているらしい。そして頚椎損傷のままそれから以降を暮らさなければならない。あの首の強ささえあれば肩こり首こりもないだろうなとつい羨ましく思ってしまうが、やはり多くの代償を払っているのだ。  経験的に、幼いときにスポーツのスの字もしなかった人が晩年健康で長生きをするケースが多い。如何にも傷めなかったのだ。身体を傷つけなかったのだ。そうしてみると人間の身体は狩猟には適していない。農耕に適しているのだ。戦うことに適していない。生産することに適しているのだ。なのに、戦うことしか考えない奴ら(カルタ、プー沈、北の将軍様、アホノミクス)にこそ、頭で回らせろ。いや、頭を回らせる。