分相応

 明後日の日曜日、牛窓の春祭りがある。当日駐車場で神輿を休憩させてくれないかと、区長に頼まれた。我が家の前には広い駐車場があるから、神輿と担ぎ手50人くらいなら余裕で休憩してもらえる。昨年の秋に初めて、だんじりの休憩所として頼まれまずまず手落ちもなく接待できたので、その実績も買ってくれたのかもしれない。と言うのは表向きの話で、恐らくだんじりを引っ張った人たちが、つまみが美味しかったので味を占めて区長に申し出たのではないかと思う。嘗て僕もだんじりを引っ張り、神輿も担いだから中身はよく分かる。信心深い引き手や担ぎ手などいなくて、所詮皆堂々と道の真ん中を酒を飲みながら闊歩できるから引っ張っているだけだ。あの味はなかなか日常では味わえない。日常味わっていたら警察に捕まる。  と言うわけで春祭りも気持ちよく引き受けたのだが、接待の内容が以前と同じでは新鮮味がない。担ぎ手にも僕にも新鮮味がない。そこで思いついたのが僕が日常接しているかの国の人たちに協力を仰ぐことだ。彼女達は快く引き受けてくれた。ただし、僕がかの国の食べ物が苦手なので、僕の試験を通らなければひょっとしたら顰蹙を買う可能性がある。そこで試食をさせてもらうことにした。独特の香辛料が僕にはあわなくて、門戸は非常に狭いのだが、彼女たちは工夫して作ってくれた。2種類作ってくれたが、どちらも日本人でも大丈夫そうだった。ただご飯のおかずには合格でも、実際ビールを飲んだときにどう感じるか分からないので試してみることにした。急遽車を走らせてコンビニに行き、冷えたビールを2本買ってきた。酒を飲む習慣がないから、また、そうした機会もないからいつから飲んでいないのだろうと考えるくらい久しぶりだった。そのかわり・・・美味しかった。結構蒸し暑いから余計かもしれないが、こんなに美味しかったのかと再認識した。  僕もやっと、些細なことだけれど頼まれごとが来るようになった。何かしら恩返しと思っていても、それ相応の年齢にならなければ来ないものなのだろうか。田舎だから地域のつながりはまだまだ強く、心地よいが、今までは与えられるばかりだったような気がする。与えられたものの多さに感謝して出来るだけ清算しておきたいが、個人の力などではどうしようもできない。夢のまた夢のような経済力があれば貢献のしようもあるのだが、いやはや酒のつまみくらいのレベルで申し訳ないと思っている。もっとも牛窓町にとっては所詮酒のつまみほどの薬局だから、分相応ではあるが。