合図

 処方箋の最後に、「話を聞いてあげてください」とプリントアウトしてくる。そういった方のほとんどは心身症の方だ。病院は忙しくて一人の患者に時間を取れないから、フォローしてくれって合図だ。そのフォローが、効きを左右するし、次回の処方変更の大きなヒントになるから、指示があろうがなかろうが省いてはいけない作業だ。薬を作って、ハイこれでは済まされない。僕の薬局では30年間当然のようになされていることだから、今更抵抗なく出来る。何処の医療機関に行っても治せなかった患者さんが、次第に集まって来ているみたいだから、息子も緊張感を持って患者さんに対峙しているものと思う。親としてそれを助けない手はないし、本当に効く漢方薬を作ることが出来る医者はまだ少ないから、ますます腕を上げて、製薬会社の出張所になることなく、患者さんだけの方を見て欲しい。  4月から、かかりつけ薬剤師という制度が出来て、その基準を満たせば薬局の収入が増える。だから急いで薬局はその基準を満たそうと動き始めている。「私があなたを担当します」と言う挨拶がここかしこの調剤薬局で交わされることになるだろう。娘夫婦に「我が家はどうするの?」と尋ねると「細々とやっていく」と答えたので、従来のやり方で通すつもりだろう。僕の父の代からなんら変わることなく「出来ることはやる」でやってきたから、今更報酬をくれるから敢えて何かをするというスタンスは娘達にも馴染まないのだろう。  それにしても政治とは金の取り合いだ。業界と言うものを作って政治屋に票を貢ぎ、その代償にいい目をする。僕は業界や組合に属していない人はいったい何処まで無視されるのだろうかといつも気になる。原発を推進しても、海外派兵できるようにしても、金のためならその政治屋を支持する。こんなことが営々と続いているのだ。とても精神を誇れる国ではないと思っている。