ブルース

 すだれの向こうから、蛍光灯の明かりと共に、生ギターのブルースが流れてきた。誰かが、窓ガラスを暑さの為に解放してブルースを弾いている。こんな田舎に珍しい音だったので、僕はしばし立ち止まって聴いていた。最近引っ越してきた家だから住人を知らないが、恐らく若者がいて彼が弾いているのだろう。夜が更けているので車もあまり通らない。物悲しい音に聞こえた。  僕は今の若者が何をしているのか、何を考えているのか、何を夢見ているのか知らない。僕にはうまく大人に管理された群像しか見えない。何かを壊し、何かを変え、何かを創る集団には思えない。大人達が錬金するネタにしか思えない。塾に行かされ、大学に行かされ、携帯電話を使わされ、給料は天引きされ、全て大人が潤う為のネタなのだ。そんなことに気がつかないから、大人はますます青年をネタに脂ぎった収益をあげる。  暗闇に消えていくブルースが、歓びなのか、悲しみなのか、苦しみなのか、或いは虚無そのものなのか僕は知らない。30年前の僕にとってのブルースは、虚無そのものだった。

いくら歩いても いくら歩いても 悲しい気持ちは変わらない ああ まっぴらさ

寒いのは嫌だ 寒いのは嫌だ 足腰立たねえ ああ まっぴらだ

今日も朝から 今日も朝から 降るのは雨ばかり ああ まっぴらだ

おいらの持ってる金じゃ おいらの持ってる金じゃ 電車賃高くて 出られない ああ まっぴらだ

パンとラーメンで パンとラーメンで 毎日パンとラーメンじゃ ああまっぴらだ

byシバ