別に諳んじられるわけでもないのに、ふと頭をよぎった。インターネットでニュースを見ていた時だ。不愉快なニュースばかりで、「国破れて」という件が今の状況を表す言葉として僕の頭に降りてきたのだろう。
戦争によってもたらされた荒廃ではない。建物は天を割き、ますます厳つくなっているが、その一方で、人々のモラルは戦争で破壊されたモノ達にも勝り、自壊の連鎖だ。
いつの時代にも犯罪は限りなく発生したのだろうが、僕らは時代を比べることが出来るほど生きることが出来ない。限られた歳月しか生きられない人間にとって、ほとんど今が全てなのだ。事件を伝える媒体のニュース枠ではとても収まらないほどの犯罪が日々起こっている。ブレーキのない欲望、あるいは絶望的な格差という名の車が走っている限り、犯罪は増え続ける。
国破れて山河在り
城春にして草木深し
時に感じては花にも涙を濺ぎ
別れを恨んでは鳥にも心を驚かす
烽火三月に連なり
家書万金に抵たる
白頭掻けば更に短く
渾べて簪に勝へざらんと欲す
(戦争によって)首都が破壊されても山や川は(昔のままかわらずに)あり、
(荒廃した)城内にも春がきて草や木が深々と生い茂っている。
(この戦乱の)時代を思うと(美しい)花をみても涙が落ち、
(家族との)別れを悲しんでは(心がはずむ)鳥の鳴き声を聞いても心が痛む。(心がはっとする)
戦火は何ヶ月(または三ヶ月)も続いており、
家族からの手紙は万金と同じぐらい貴重だ。
白髪頭を掻くと(髪は)ますます短くなって、
冠をとめるためのかんざしも挿せなさそうである。