良き日

 明日死ぬかもしれないような形相で車椅子に乗って、何にこだわっているんだと思っていた。もう寿命は尽きているだろう人間が、くだらない置き土産をするなといつもその醜態を見ながら思っていた。そして今日、その不快な映像をもう二度と見ることがなくなったことを知った。妻のスマホの速報で入ったニュースだ。たった一人の強欲で何百万人の若者を殺すこともできる。北の将軍様金平糖みたいな人間をこの国に作ってはいけない。
 今日は空気は冷たいが風がないから戸外に出てもさわやかだ。最後の秋の空は青く、綿菓子のような雲をいくつも浮かべていた。今日は良き日。