卒業

 日本のアニメが世界で注目を浴びているそうで、先日フランスでの人気振りがテレビで紹介されていた。日本の文化が輸出されて喜ばしいことなのだが、単純には喜べない。  僕が漫画を読み始めたのは、恐らく小学校からだろうが、中学生と高校生の時に読んだ記憶がない。ひょっとしたらそれなりに勉強をしていて、漫画を読む時間がなかったのか、それとも興味自体がなかったのかもしれない。その後大学に入って少し読んだが、そのうち読まなくなり漫画をそれ以来手には取っていない。勿論テレビでやっているものも見ないし、最近引退表明した有名な監督の映画も見ていない。  最近僕が何かにつけ感じることを言葉で表せば「卒業できていない」となる。例えば、インタビューに答えるフランス人の年齢層がかなり高かった。○○を見て育ったと言うが、育ちすぎだろうと言葉を返しそうになる。もう自分が何かを育ててもいい年頃なのに、まだ育っているのか、まだアニメかと言いたくなる。  この傾向はアニメだけではない。ありとあらゆる事象でその傾向が定着している。いつまでも同じ所に留まり脱出できない人があまりにも多い。人は年齢を重ねるに従って新しい境地を発見し、それを楽しむものだと思うのだが、いつまでも同じことに興味が留まっている。まるで成長を止めたようだ。多くのものを積み重ねていって一つの人格を築くのかと思ったら、たった一枚の薄っぺらな服で満足している。  一つのことにこだわり続け何かを作ることが出来る特別な才能を持っている人は別として、多くの凡人はそれなりのステップを踏みながら、時には捨て、時には得ながら成長するものだと思う。卒業下手の若者や中年が、余りにも多すぎるのではないかと感じる。