壮年期

 麓に止めてある車の屋根にも数十センチの雪が積もっている。道路は勿論辺りは完全に雪景色。その中を山深く登っていった人達が遭難したかもしれないとニュースが伝えた。よくあることではあるけれど、テレビ画面に表示された人達の年齢に驚く。60歳代後半から70歳代の方ばかりだった。決してよいニュースではないが、その年齢で、深い雪の中を登っていける気力と体力に圧倒される。どのくらい元気な人達だろうと思う。身体に痛いところもなく、循環器系も折り紙付きでないとそんな行動はそれこそ命取りになってしまうだろう。心身共に元気だから可能なのか、そう言った行動こそが心身共に元気にするのか分からないが、僅か数センチの雪でも外出を控える僕などとは雲泥の差だ。 壮年期が長くなったのだろうか、老年期と呼ぶにはやっていることが不釣り合いだ。経済的にも恵まれているのだろう、第2の人生を謳歌している。切れる熟年も多いと言うから遠慮もなくなった世代なのだろうか。それに比べて若者たちの方が、行動的でもないし我慢が得意のように見える。経済的に余裕がないから、生きていくためだけで精一杯なのだろう。余暇も余力も余裕もありはしない。その日その日を無事に過ごすだけで懸命なのだ。冒険も挑戦も、僅かなものでさえ失ってしまえばおしまいの世代に出来るわけがない。敗者復活は余力を保証された人にしか機会を与えない。 本来、大人たちの天敵は若者だったはずだ。天敵を去勢し自由に操り、我が身を低くしない延びすぎた壮年期の人達に違和感を感じる。彼らがどこかに置き忘れてきたもので、若者たちが過去を壊さないで、未来も作れないとしたら、春に降る新雪に残る足跡も見つけることは出来ないだろう。