うらじゃ踊り

 漢方の勉強会に行くときも、帰るときも、多くの衣装を凝らした集団とすれ違った。幼い子から若者まで、それぞれグループが奇抜な服装で炎天下を歩いていた。ニュースで昨日今日と岡山の街が祭りだと知っていたから、渋滞を恐れて裏道を車で走ったのだが、会場の大通りに並行して走る裏通りも多くの人が行き交っていた。  昨夜の花火大会に続いて今日はうらじゃ踊りとメイク(温羅化粧)を競うらしい。だからそろいの衣装を着た集団が移動していたのだ。恐らく僕が研究会に行く頃、踊りが始まり、研究会が終わる頃踊りも終わったのだろう。大通りをおおっぴらに占拠して踊りまくるのはさぞかし気持ちがいいだろう。独創的な衣装、独創的な踊り、制限がないのがいい。若者達が多く参加して、彼らに支持されているのが分かる。運営の全てをボランティアがしきるのもいいのかもしれない。もう15年くらいになるらしいが、僕は正式に見たことはない。ただ裏通りを移動する光景は何回も見ているから、恐らく毎年研究会と祭りの日が重なっているのだろう。  祭りのメインテーマの“温羅(うら)”は、日本の昔話「桃太郎」に登場する“鬼”だそうだ。ひょっとしたら桃太郎は岡山県で一番有名な人かもしれない。竹久夢二や柴田練三郎など1級の有名人もいるのだけれど、桃太郎には勝てない。温暖な地で、何故勇ましい話が生まれたのか知らないが、どちらかというと現代では温羅のほうへ脚光が浴びているのがいい。総社市には備中温羅太鼓と言って、それはそれは素晴らしい和太鼓集団がある。舞台の上では半端なプロの芸術家よりははるかに完成された演奏を聴かせてくれる。それこそ温羅の衣装で太鼓を力強く乱打する姿は圧巻だ。 うち負かされる側の代表みたいな存在に、思いを致すのは大切だ。時代は桃太郎を要求していない。錯覚している輩は国内にも外国にもいたが、その多くは退場した。所詮些細な善意しか示すことが出来ない僕ら凡人は、日曜日の昼下がり、少ない知識を埋めるためにコツコツと勉強するしかない。ところで勉強会場は「何処の裏じゃ」