嘔吐下痢

 朝食をとろうとすると、貧血気味になり、吐き気がした。そのうち頭痛と軽い悪寒にも気がついた。正月2日の日から、嘔吐下痢や高熱の風邪の方が多く、接する機会が多かった。医療機関が開けても嘔吐下痢の胃腸風邪は漢方薬の方がよく効くから、結構来られる。恐らくそれが移ったのだろう。仕方ないと言えば仕方ない。そう言った職業なのだから。 朝食は抜いて、漢方薬と栄養剤だけですました。調剤室で薬を作っている間に運良く症状が収まってきた。30分くらいで吐き気が止まり、1時間の内に完全に治ってしまった。運が良かった。おかげで今日も問題なく働けた。僕らは、薬が手元にあるので早く飲める。恐らくウイルスが爆発的に増える以前に薬を飲めたから間に合ったのだろう。  正月の間はともかく、仕事が始まってからでも、ムカムカするのをこらえたり、激しい筋肉痛を伴う倦怠感を抱えたまま薬を取りに来る人がいる。家族がいないのだろうかと考えたり、仕事を休めないのだろうかと考えたりする。薬を持って帰って、家で寝ていたらと勧めるが、そうすると答えた人は一人もいない。高熱だからインフルエンザかもしれない。途中でゲエゲエ吐きながら来たのかもしれない。それにしても、その人達の強さには感心する。そんなことを言っておれないと言うが、そうしないといけない情況でもそうしないですむのだから、余程の気力体力がないと出来ないだろう。逆に一人暮らしの、特に老人達の心細さと言えばどれほどなのだろうと想像する。また、路上で眠る人達の心細さはどれほどなのだろう。凍死も十分起こりうることなど覚悟の上か。覚悟を上回るどうしようもない諦念か。メチャクチャの幸せなんていらないから、メチャクチャの不幸だけは公平に避けて欲しいと願う。夜を懐に隠しても、摩天楼から降る光で暖はとれないのだから。