斜面

 どのチャンネルを回してもそのタレントの死をやっているので、うんざりするのだが、華やかな世界に生きていそうな人達でも孤独はあるものだと想像する。興味がないので、内容については全く知らないが、その女性の縁の無さを思う。その世界がどの様な人間関係で成り立っているのか知らないが、せめて助けを求める人くらいはいるだろうし、悲鳴を上げれば声が届く人もいるだろう。どの様な治療を受けていたのか知らないが、薬だけで治るものばかりではない。薬だけで治るのは単純な疾病で、あらゆる分野が乱れて崩れている現代で、病だけが古典的であるはずがない。時代の発展と共に、人心の後退と共に、疾病は複雑化している。解けないもつれを解くのは薬ではなく、体温を持った人間がやる仕事。薬物に全部背負わせれば、限界は自ずと見えている。  それにしても、死んでからも、いや死に方までも商売のネタにされるのだから、その世界の人間も大変だ。僕らは2,3日も経てば家族以外からはほとんど忘れられる単なる景色のような存在でいい。春には新しい草が取って代わる土手のような斜面でいい。晴れた日には太陽で温められ、名も知らぬ草が遠慮がちに花を咲かせればいい。時には幼い子供が近寄って、ちょいと茎を折って持ち帰ればいい。